ザ・ガッターズ「アンタのために俺たち歌うんだ」

以前紹介した博多のロックンロールバンド「ザ・ガッターズ」の二枚目アルバム「アンタのために俺たち歌うんだ」について書きたいと思う。
なぜって、それは書きたくなったから。

前作ではまだまだ彼ら自身のバックボーンをそのまま表現したに過ぎない(とは言いつつそれはむしろ素直にかっこいい)作品だったが、今作を聞いて正直ここまで成長するものなのかと驚きを抑えられずにいる。
私自身このバンドを見たことがないのでなんとも言えないが、今作は数多くのライブという「修羅場」をくぐってきた上で制作されたアルバムであることがジャケットを見ただけで伝わる。
そして何より、自分たちのバックボーンを昇華し自分たちの音に仕上げている。
もちろんオールドロックが好きな私としては、そのロックたちが持っている「かっこよさ」がないと聞く気にもなれないものだが、そんな期待を軽く裏切ってくれた。それも良い意味で。

前作と対比して書かせてもらうのが一番わかり易いが、以前なら「あ、バックボーンこれね」って思ったが、今作はそれが霞んで見えるだけだ。むしろ「俺たち博多のサラリーマンロックたい!」という意識が全面に出つつ、それがロックなんだよと言わんばかりの感情が爆発している。正直恐れいった。

  1. アンタのために俺たち歌うんだ
    オープニングを飾るのは、タイトル曲「アンタのために俺たち歌うんだ」。この曲に今作のコンセプト、意気込み、生き様、替え玉に対する執着心が現れていると言っても過言ではない。アップテンポなリズムから前作に比べてよりソリッドになった楽曲群とビビッドになった歌詞が飛び込んでくる。この曲に元気づけられる全博多区の人たちが羨ましい。
  2. トライ!
    さすがは東福岡、福岡高校、そして筑紫丘など次々にラグビーの名選手をを生み出す街のバンドである。ここでラグビー応援歌か!と思ったが、聞いてみると少し違った。ただの私の勘違いでもあるが、歌詞の冒頭「トライエブリバディ!」と言っているのははからずも「One for All, All for One.」の精神ではないか。ここは解釈の問題だが、私はやはりこれはラグビー応援歌に相応しいと感じている。福岡のラグビー協会におすすめしたい。
  3. 遅れてきた青春
    当然ロック好きな人なら見たであろう「さらば青春の光」。布袋寅さんじゃないぜ。当然ながら曲名から思い出すのはあの映画なのだが、実際聞いてみるとこれはむしろあの映画に対してのアンチテーゼなのではないだろうか?とすら感じる。失ったものなんてどうだって良いじゃないか。そんな意気込みが伝わってくる元気ソング。
  4. テイク・イット・イージー
    先日グレン・フライが亡くなったわけだが。この曲はイーグルスとは全く関係ない。個人的な話だが、実は僕はイーグルスが苦手だ。なんて言うだろう、西海岸のあの「平和!政治!」みたいな空気感がちょっと苦手だ。人がやる分には良いが、私は苦手だ。閑話休題。ガッターズと言うバンドは根本的に前向きだ。がむしゃらではない前向きだ。ギターソロで少し憂いがあるところが彼らなりのアイデンティティーでもあるのだろう。
  5. イッツ・マイ・ライフ
    個人的にはポーグスを思い出した。楽曲がとか歌詞がとかではない。もたらすイメージがどこか悲しげな匂いを放つ。アルバム内で唯一のスローナンバー。
  6. パッと行こう!
    昔西新JAJAというライブハウスで見た大阪のバンドにウルフルズと言うバンドがあった。大阪ならではのユニークさに当時衝撃を受けたものだが、博多にもこんな曲を演奏できるバンドがあるんだ!と少しうれしくなるナンバー。
  7. 爽快ロック
    爽快ロックという題名ではあるが、どちらかと言うと昔京都にいた「ローザ・ルクセンブルグ」というバンドを少し思い出す。当時は衝撃を受けたもんだが、博多にもこんな曲を演奏できるバンドがあるんだ!と少しうれしくなるナンバー。
  8. 夕焼け、キミを照らすとき
    ここに来てこのバンドの懐の深さを魅せつけられた。モジュレーションのかかったギターと曲が相まってスカっぽいリズムが心地よい。こうやって生きていくのも悪くはないさと思わせる、今の時代の皆に聞いてもらいたい一曲。
  9. 立ち上がれダイナソー
    昔ダイナソージュニアと言うバンドがあった。それは置いといて。アルバムも後半だというのを気づかせてくれる、少し哀愁の漂うアップテンポナンバー。個人的にはこのバンドにはこういう曲が栄える。まだ聞きたい、でも終わりは近づいている。それは人生においても同じこと。そうなメッセージが伝わってくる。しかしまたきっと戻ってくる。そんな心に染みる佳曲。
  10. Sun Flower
    昔静岡から長崎に引っ越した時に、僕ら家族は神戸からの海路を選んだ。その時に乗ったのがサンフラワーフェリーだった。あの時船上でかかっていたのが、眠れぬ夜 だった。小学1年生の僕はあの曲に寂しさとか期待とか、少し甘酸っぱいものを感じた。この楽曲が決して眠れぬ夜に似ているわけではない。ただ、同じ匂いがする。僕を掻き立てる何かがこの曲には確実にある。最後を締めくくるにふさわしい名曲。

次のアルバムに期待せざる負えない名盤ですね。
一度ライブを見てみたいものです。

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